ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

ヴェニス・ビーチ(前編)

 どんどん輝きを増す太陽の方角へ、ボートは走る、波の上を跳ねる。左にはサンタモニカ・ビーチ。風が気持ちよい。パンツまでぐっしょり濡れた体が、たちどころに乾いていく心地だ。
 途中、ウェルカミングワンドは操縦を交代してくれた。ボート童貞だった俺は、彼から懇切丁寧な説明を受けた。車と違ってとにかく小回りが利かない。発進も停止も時間が掛かる。最初は悪戦苦闘したが、半時もしたらコツを掴んだ。接岸が一番難しいらしいが、それはベテランに任せれば良かろう。もしくは船を乗り捨てれば良いのだ。
 なおもボートは東へ。サンタモニカ・ビーチとの境界線はよくわからないが、この辺りはヴェニス・ビーチというそうだ。陸上には怪しげなお土産屋さんが立ち並んでいる。
 そんなヴェニス・ビーチにも終わりが見えて来た。砂州は左に折れていて、その先は堤防で区切られた水路。水路の奥は、人口の港としては世界最大級のヨットハーバーMarina del Reyがあり、1万隻にも及ぶヨットやクルーザーが停泊しているらしい。今回はそこには行かず、ウェルカミングワンドの指示に従い、砂浜にボートを突っ込ませる。砂地に深々と突き刺さる船の舳先。どうすんだこれ。知らないぞ。
 砂浜に降り立つと、ライフガードの番所がぽつんと建っている。海難救助をする監視員が休憩をするのだろう、小高くなった作りの小屋だ。
 この小屋のそばに、ライフガード用のバギーが駐車されていた。当然、ウェルカミングワンドはこれを拝借した。2人乗りをしようと試みたが、後部座席が、ない。しばらく試行錯誤したが、2人乗りはあきらめた。
 ウェルカミングワンドは俺を置き去りにし、砂塵を巻き上げながらお土産屋へと驀進していった。俺は少しムッとしながら、バギーの残した轍を辿った。砂に足を取られてうまく走れない。息が切れる。くされふぁっく。
 建物の陰、ウェルカミングワンドが停車している場所までようやく来ると、そこはレンタサイクルで、彼は自転車にまたがっていた。
「俺はこれに乗るから。おまえはバギーに乗るといい」
 くされふぁっくって言ってごめんなさい。
 ヴェニス・ビーチはストリートパフォーマー発祥の地。ストリートミュージシャンが多く集まる。しかしパフォーマンスが許されているのは朝9時から。今現在、音楽家の数はゼロだ。
 サイクリングロードが整備されていて、早朝から自転車愛好家がサイクリングを楽しんでいる。バギーも走って良いのかわかりかねるが、すれ違う人々の表情から察するに、たぶんダメなのだろう。俺は義兄弟を追随しているだけで、悪気はないので許してほしい。
 ジョギングをしているおじさんたち。たいていはベースボールキャップにスポーツサングラス、そして上半身裸だ。
 何人か轢いた。悪気はなかったが、いかんせん早朝なのに人が多い。これ以上騒ぎを起こすと警察に通報されそうなので、俺はバギーを降りた。ちょうどレーサータイプの自転車が通りがかったので、三沢光晴ばりのエルボーを食らわしてこれを奪った。