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ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

高級マンションでのホームパーティー

 サルマスクの住む高台のマンション「シエラ・タワー」は、あきれるほど豪華な物件だった。どんな悪いことをすればこんな所に住めるのか。リビングだけでも30畳くらいあるのではないだろうか。2階層の構造で、下のフロアにベッドルーム、バスルーム、ウォークインクローゼットがあった。
 警察のサイレンは階下でまだ鳴り響いていた。けれどサルマスクはあっけらかんとしていて、ウィスキーをグラスに注ぎながら、陽気な口調でこう説明した。
「ここまでは踏み込んでこれないから安心しろ。ポリ公どもは、俺が自宅に逃げ込むまでに、どうにかしなければならなかった。この鬼ごっこ、俺たちの勝ちだ。そのうち指名手配も解除される」
 家宅捜索をするなら令状が必要だという事だろうか。確かにマンションの中まで警察は突入してこない。
 あれだけの警官を殺害しておいて、無事で済むのだろうか。俺はまだ不安を感じていた。
 俺の不安は杞憂に終わった。しばらくすると、彼の言葉通り指名手配は解除されたらしく、警察は渋々あきらめて撤収していった。
 俺たちは乾杯をし、義兄弟の契りを結んだ。彼はコードネームを「パワーヒッター」と言った。レトロプロダクト、ウェルカミングワンドに続く、3人めの相棒となった。
 パワーヒッターがウォークインクローゼットに移動し、コーディネートを試し始めた。この時間を利用して、俺はシャワーを使わせてもらうことにした。思えばロサンゼルスに来てから一度も風呂に入っていない。俺は服を脱ぎ、鏡の前で自分の裸体を確認した。傷は全てふさがっていたが、流れ出た血液の跡が肌にこびりついていた。狭いシャワールームに入り、熱い湯を浴びた。体中べったりと付着していた血糊を洗い流した。
 さっぱりして風呂から出ると、パワーヒッターはタキシードに着替えていた。顔にはサルのマスクをかぶったままだったが。
「ホームパーティーでもするか。さっきプライベートダンスで落としたストリッパーを呼ぶからな。それから、そこらへんにうろついているクソッタレも呼んでみよう」
 パワーヒッターはストリッパーに電話をし、住所を告げた。それから、ロサンゼルスにのさばるクソッタレどもに対して無差別に、招待のメールを一斉送信した。
 すると、時を経ずしてドヤドヤと、いかつい風貌のクソッタレどもが次々に入室してきた。これ全部パワーヒッターの友達なのだろうか。聞けば「違う」と言う。知らない連中ばかりだった。こんな荒くれ者たちを不用意に自宅に招いても大丈夫なのだろうか。
 実は人の家に武器を持ち込んではならないという暗黙のルールがあるらしく、みんな丸腰だった。家主であるパワーヒッターも丸腰だった。
 路上で会えばすぐに殺し合いを始めるクソッタレどもは、この時ばかりはお行儀が良かった。ある者はパワーヒッターに敬礼をする。ある者は望遠鏡で北側の丘に建つ住宅地を眺める。ある者は水タバコを吸い、ある者は書斎の壁を飾るゴールドディスクに嘆息を漏らす。何人かはソファーに座り、100インチはあると思われる大画面の液晶テレビでアニメを観始める。
 チャイムが鳴った。パワーヒッターが応対に出ると、ドアの外にはブルネットのストリッパーが下着姿で立っていた。誰かがラジオのスイッチを入れる。室内は大音量の西海岸ヒップホップで満たされる。パーティーが始まった。
 ストリッパーはイスに座ったパワーヒッターの上でクネクネとセクシーなダンスを披露した。各々自由に過ごしていたクソッタレどもはその周りに集まってきて、歓声を上げながら思いっ切り腰ふりダンスをした。左手で作った輪っかに右の人差し指をズコズコ抜き差しするやつもいた。そうして、全員でマスを掻く仕草をした。実に猥雑。実に卑猥。
 パワーヒッターに席を譲ってもらった。イスに深く腰掛けると、ストリッパーは艶めかしい動きで俺に迫って来た。ストリップクラブと同じ光景が目の前に繰り広げられた。今度は従業員の目を気にせず触り放題だった。周りを取り囲んだクソッタレどもはハチャメチャに踊り狂っている。
 一通り満足すると、他の奴と代わってやった。そいつも嬉しそうにストリッパーを愛撫しまくった。周りのクソッタレどもも腰を振ったり、しごいて発射する手つきをして囃し立てた。乱痴気騒ぎはいつまでも終わりそうにない。
 俺は狂騒から少し距離を置き、酒を呑むことにした。どうせタダだからしこたま飲んでやれと、ウィスキーを注いでは飲み、注いでは飲み、へべれけになるまで飲み続けた。体が火照り、視界はじわじわと滲み、こうべが垂れて来た。足元はすでにおぼつかない。それでも俺は飲み続けた。俺の隣では、瓶ビールを何本も立て続けに一気飲みし、フラフラよろめきながら、それでもラッパ飲みをやめない男が飲み競べの相手を務めてくれた。
 何杯飲んだか覚えていない。突然、体の自由が利かなくなった。俺は絨毯の上にぶっ倒れ、意識を失った。