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ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

車を改造する

 ガレージでハチロクに乗り換え、すぐ近くの自動車修理工場にお邪魔した。ある程度の資金も貯まったし、愛車を個性的に改造し、町行く人が振り向くようなカッコイイ車、より自分好みのマシンに進化させようと企てたのだ。
 改造パーツのカタログを見せてもらった。車の走行性能を高めるパーツ(エンジン、トランスミッション、ブレーキ、サスペンション、ターボ)から、主に車の外観を変えるパーツ(バンパー、ヘッドライト、グリル、ボンネット、ロールケージ、ルーフ、サイドスカート、リアスポイラー、マフラー、ナンバープレート、ボディーペイント、タイヤ、ホイール、ウィンドウカラー)まで、さまざまなカスタマイズパーツが取り揃えられていた。一般に、値段の高い物ほど高性能だった。
 その中に、「Shakotan Exhaust」という名前のマフラーがあった。これはいわゆる「竹槍マフラー」であり、シャコタンは世界共通語になっているのかと驚いた。整備士に訊くところによると、「Bousouzoku」という言葉も、「ジャパニーズストリートレーサー」を表す語として有名だそうだ。
 竹槍マフラーなんて、日本では田舎の珍走団しか装備しない。はっきり言って悪趣味でダサい。しかし、ここロサンゼルスでは、逆にクールなのではないか。とにかく目立つことは間違いない。俺は目立ちたかった。他の車とは際立った個性を獲得し、他のクソッタレどもから一目置かれたかった。
 俺はジャパニーズストリートレーサースタイルの、悪趣味全開な車にハチロクを変身させようと決意した。日本では乗るのが恥ずかしくなるような、コテコテの暴走族スタイルに。
 まず、竹槍マフラーを装着してもらった。ハチロクのリア底部から、2気筒のマフラーが空に目がけて勢い良く突き出した。ターボを搭載したので時々火が噴くようになった。
 サスペンションをいじってもらい、全体の車高を下げた。
 そして、バンパーをいわゆるシャコタン(車高短)、地面すれすれの低さに出っ張らせてもらった。フロントもリアも。おまけに、往年の走り屋アクセサリーである吊り革をリアバンパーにぶら下げた。
 サイドスカートも前後のバンパーに合わせて地面すれすれに垂らしてもらった。
 リアスポイラーは可能な限り大きな、F1レーシングカーのように仰々しいGTウイングを取り付けた。
 バンパー、サイドスカート、リアスポイラー。これらは本来、空気抵抗を低減させ、高速走行を安定させるためのパーツだが、俺が施した改造は単なるファッションだった。想像していた以上にビジュアルがBousouzokuになっただけで、空気力学的な効果があるとはとても思えなかった。
 ホイールは高級車用の物に交換。タイヤは特注品に履き替えた。このタイヤはパンクしない防弾仕様であり、なおかつトレッド面(接地部分)に赤色の粉を混ぜ、摩擦時に真っ赤なスモークが出るようにした特別仕様だ。
 この時点で俺はかなり満足した。愛車がいかつい表情になり、ロサンゼルス中どこを探しても見つけられないであろう個性を獲得できた。しかしカタログをペラペラめくっていると、ボディーペイントをクロームメッキ仕様に変更できることを発見した。これは車体全体をステンレスにしてしまうような魔改造であり、周辺景色を鏡のように映すギラギラとした銀色である。対向車はまぶしくて迷惑だろうなあ。悪趣味な車にするならば、とことんまで追求しなければ。俺はクロームメッキに強く惹かれた。が、整備士によれば、大金を積めば変更してもらえるという単純な話ではなく、それ相応の実力を伴ったドライバーしか変更してもらえないということだった。「それ相応の実力」とは、具体的にはストリートレースで通算50勝することだった。ストリートレースで50勝! かなりハードルの高い条件だが、達成のあかつきにはクロームメッキ仕様イコールストリートレースの覇者として、他のクソッタレが羨望のまなざしを向けるのは間違いない。同様に、もしスタントジャンプを数多くこなせば、ホイールの色をライムグリーンに塗装してくれるという。目のチカチカするような蛍光色であり、これも目立つこと間違いなしだ。
 ボディーペイントとホイールカラーは、いつの日にかギンギラギンにすることを夢見、現状を維持した。また、エンジン、ブレーキ、トランスミッションなど、走行性能に関する改造については、予算不足により見送った。
 最後に、クラクションを標準装備の警笛から、アメリカ国家が流れるミュージカルホーンに取り換え、俺は修理工場から退出した。