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ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

桟橋の下で取引を邪魔する(前編)

 初めて(それとは知らず)裏稼業に身を投じたとき、俺はサングラスの男とドレッドヘアーの男と一緒に、ギャングの集団から包み紙を略奪し、色眼鏡をかけた黒人のデブに届けた。その、黒人のデブから、「下っ端でも出来る簡単な仕事」として、求人募集があった。サンタモニカ・ピアの橋桁の下で、暴走族とストリートギャングが、ドラッグの闇売買をするらしく、取引されるブツを奪って来いというものだった。
 やりとげる自信が、まったくない。
 個人的にはビル清掃とかピザの宅配とかセレブの犬の散歩などをしたいのだが、俺に与えられた求人情報はこれしかなかった。英語をまともに話せない俺に、まともな仕事は、ない。
 割に合う仕事ではある。命を危険にさらすことになるが、多少死んでも俺の体は大丈夫みたいだし、カタギの仕事より短時間で高収入が見込める。なかなか1位になれないストリートレースよりも確実だ。
 少し迷ったが、この仕事を請け負ってみることにした。「下っ端でも出来る簡単な仕事」とのことだから、連中は銃を所持していないのかも知れない。
 近くを通りがかった手ごろなコンパクトカーを拝借した。目的地をカーナビにセットするとルートが表示された。俺はコンパクトカーのアクセルを目いっぱい踏み込んだ。特に急ぐ必要もなかったが、最高速を目指し、サンタモニカ大通りをひたすら西へ走り始めた。
 途中何度か事故りながらサンタモニカ・ビーチに辿り着いた。ハリウッド同様、ここもロサンゼルスに来たなら必ず訪れたい観光地だ。しかし今回はビジネスでの訪問なので、ブラブラするのは次回におあずけだ。
 カーナビは案内を終了したが、俺はコンパクトカーに乗ったまま砂浜に突入した。ビーチバレーを楽しんでいる人たちから悲鳴が上がった。サイクリングやジョギングの最中だった人は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。
 行楽客のパニックは気にせず、俺は波打ち際近く、桟橋の橋脚近くに車を停めた(ちなみにサンタモニカ・ピアの「ピア」とは桟橋という意味である)。極力足音を立てないように走り、取引場所である橋桁下のトンネルへと向かう。この陰気なトンネルは、桟橋を階段で乗り越えたり迂回したりしなくても、向こう側へ通り抜けられるようにするための通路だ。
 壁に背をつけ、そっとトンネル内部を覗く。いた。チョッパーハンドルのアメリカンバイクや、真っ黒いマット塗料のワゴン車が数台停まっており、革ジャンを着た男たちとストリートギャングたちが、何か談合をしている。内部は薄暗い上に柱が何本も立っているので敵の正確な人数は把握できない。これ、本当に勝てるの? こっちは一人だし、ピストルしか持ってないし。あちら様が10人以上いて、それぞれマシンガンや自動小銃を装備していたら、絶対に負けるだろう。俺は突入をためらった。
 そうっと近寄って、ドラッグだけくすね取るのはいかがか。いいや、透明人間でない限り無理だろう。では、売買が成立したあと、ドラッグを所持している方の集団を尾行して、少人数になったところを奇襲するというのは? いいや、どちらが売人なのか暗くてわからないし、取り逃すリスクが大きすぎる。
 こうしていても埒が開かない。彼らからドラッグを強奪し、色眼鏡をかけた黒人のデブに届けねば、いつまで経っても仕事は終わらないのだ。それに、この仕事が不首尾に終われば、今後ほかの仕事を受注するのにも影響が出るだろう。やるしかない。