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ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

賞金首になる

 一通りごっこ遊びを楽しんだ後、俺は劇場の外に駐車している車を物色した。ピカピカの白いボディー、アメリカサイズのSUVが、エンジンを掛けっぱなしで停車していた。水色のアロハシャツを着たデブが運転席でスマホをいじっている。もしもし、アイドリングストップにご協力ください。ドアを開け、運転手の頭をハンドルに叩きつけてから引きずり下ろし、地球環境を守る名目でカージャックをした。これで街へ戻りがてら、カーディーラーを見かけたら売り払って小遣いの足しにしよう。
 すると、順調に走り始めてほどなく、差出人不明のメールが届いた。
「俺の車を取ったな。おまえはすぐに霊安室行きだ、マザファッカー」
 立て続けに、もう1通メールが届いた。
「気を付けろ。誰かがおまえに7000ドルの懸賞金を掛けたぞ」
 意味がわからなかった。気味が悪かった。SUVの持ち主がヒットマンでも雇ったというのか。ふとカーナビを見ると、現在地がドクロマークになっている。他の犯罪者がレーダーを見れば、俺は白丸ではなくドクロマークに見えるのか。いたずらにしては出来過ぎている。
 嫌な予感は的中した。レーダー上に丸が3つ入ってきた。それぞれ2時の方向、10時の方向、4時の方向から出現した。それはドクロマーク目がけて、つまり、俺めがけて急接近する。俺は7時の方角に向けて走っていたが、やがて丸3つは俺が走行中の路線に合流し、まるでレースをするように7時の方向に走り始めた。あきらかに俺を追ってきている。7000ドルを目当てにしたバウンティーハンター(賞金稼ぎ)どもだろう。懸賞金はいたずらや脅しなんかではなく、現実に掛けられていた。
 俺がカージャックした車は高級そうだが所詮はSUVであり、それほどスピードが出ない。追手との距離は徐々に縮まっていく。
 俺自身がゴール地点であるレース、1着は平べったい緑色のスーパーカー。サイドミラーに映るその姿を、目視で確認した。サブマシンガンを乱射してきた。バックドアに数発被弾し、左後輪がパンクした。スーパーカーは速度を調整してSUVに横づけし、運転席に銃弾を浴びせた。俺はたまらず急ハンドルで路地に逃げ込み、これ以上の逃走は不可能と判断して車を乗り捨て、全力疾走で安全な場所を探し求めた。そうこうするうちに他のバウンティーハンターもすぐそばまでやって来た。
 辺りは高級住宅街。俺は塀をよじ登り、一軒の豪邸に闖入した。植え込みの手入れが丁寧にされた華美な庭。そして、澄んだ水をたたえた肝臓型のプール。縁に半球のスペースが設けられているのは、もしかしてジャグジーだろうか。しかし見とれている暇はない。俺は植え込みを突き抜け、隣の屋敷に移った。さっきの豪邸とは全然別の個性があり、ここもまた美しい。長方形のプールがあり、バスケットのゴールもある。俺はバーベキューグリルの横を走り抜け、再び塀をよじ登る。奥へ奥へと急ぐ。少しでも道路から離れた場所へ。より遠くへ。バウンティーハンターが追跡をあきらめるくらい遠くへ。
 チラッとレーダーに目をくれると、やはりバウンティーハンターたちも車を降りて追ってきている。なんてこった、俺が何をしたっていうんだ。
 俺はとっくに息切れをしていたが、ただひたすらに豪邸から豪邸へと移動を続けた。限界を超えていたが立ち止まることはしなかった。肺が破れて血を吐いてでも逃げ回ってやろうと思った。
 背後で銃声が聞こえた。小さく遠い音だった。バウンティーハンター同士で小競り合いをしているのだろう。彼らは協力して俺を仕留めようとしているのではない。7000ドルを獲得できるのは、俺を最初に殺した者だけなのだ。
 邸宅が途切れ、道路に出た。車が通りかかったらすぐさま奪って逃走してやろう。耳を澄ませる。車の走行音を頼りに、見通しの悪いクネクネ道を下った。走行音に近づく。あまり聞きなれないモーター駆動音と、路面をガタガタ走る音が高まった。キャタピラ?
「ブルドーザーか。そんな物を盗んでも、逃走の役には立たない……」
 植栽の向こうから戦車が現れた。本物の。マジかよ。
 主砲が轟音を挙げた瞬間、俺の立っていた場所には煙が勢いよく膨張した。賞金7000ドルは戦車を操縦していたクソッタレが獲得。