ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

ガレージを購入する

 その後、俺はストリートレースへの出場を繰り返した。命に関わらない安全な金稼ぎの方策であったし、自動車修理工場でクロームメッキを施してもらう条件「ストリートレース通算50勝」を成し遂げるためでもあった。
 どんなストリートレースにおいても1着でゴールするのは容易ではなかった。市街地でのレースは一般車両も普通に通行しているため、運の要素が絡んだ。そもそもマナー知らずのクソッタレどもが出場しているので、スタートからぶっちぎり1位を独走していても、コース途中やゴール寸前で待ち伏せをされ、あの手この手で妨害された。
 一般車両を排除した公道貸し切りレースでは、プロレーサー並の強者どもが多数参加しているので、運が絡まない限りどうしたって勝てなかった。いわゆる「初見殺し」のコースは、通過すべきチェックポイントが新参ドライバーにはわかりにくく、何度もそのコースを走破しているベテランにはとてもじゃないが太刀打ちできなかった。誤ってカスタムカー使用可能なレースにエントリーしてしまった時は、長距離のコースを走り屋たちと競走する羽目になり、まったく歯が立たなかったため途中でリタイヤした。
 1着でなくては勝利としてカウントされず、たとえ2着でゴール出来ても無意味だった。俺は徐々に負け込んでいった。それは他のレーサーも同様だった。レースエントリー時に対戦相手の戦績を見ても、勝ち越している者は1人も居なかった。プロレーサーのような経歴の選手であっても、勝利数と敗北数はトントンだった。中には100戦もしてたった2勝しか出来てない哀れな選手もいた。
 負けレースを重ねるうち、俺はうんざりしてきた。この状況をなんとか打破しなければ。
 必勝法を思いついた。少し卑怯だが、初心者を初見殺しのレースに誘い、一騎打ちすれば良いのだ。
 都市部からかなり離れた田舎に、田舎道をバイクで走るレースがある。総距離は短いが、舗装されてない細い道を走る上に、途中で牧場の敷地内を通過するので、コースが非常に解りにくい。俺も最初は「簡単なコースだよ」とだまされて出走した。後塵を拝するどころか、レースが始まって早々牧場の柵に激突して転倒し、その後は相手の巻き上げる砂埃すら目にすることなく、大差で敗北した。
 レースにエントリーするとき、相手の運転技術が未熟と見れば、必ずこのコースに勧誘した。相手は初出場である。一方、俺は何度もこのレースを経験しており、道順も完璧に把握している。出走前から勝敗はおのずと明らかだった。彼らはたいてい、牧場敷地内に進入する直前のチェックポイントで、巻き返し不可能なほどの致命的なミスをした。俺がクラッシュした柵と全く同じ柵ですっ転んだり、曲がらねばならないコーナーを通り過ぎても気付かずに直進し続けたりした。
 レース後、相手がむきになって「もう1回!」とせがむものなら占めたもの。プラス1勝は保証されたようなものだった。
 俺はこの作戦で15勝はした。せこいしみっともない遣り口だったが、勝利数を稼ぐためには仕方がなかった。
 そうこうするうちに俺の運転技術は徐々に向上し、市街地でのレースでも自力で1位になる回数が増えてきた。寝食を忘れてストリートレースに出場しまくった。そしてついに、念願のガレージを購入する資金が貯まった。
 俺はスマホから不動産のサイトにアクセスし、最安値のガレージを検索した。あまり田舎だと不便なので、ロサンゼルス市内に限定した。あった。市の中心部からは少し外れるものの、一応都市部。収容可能台数は2台。買うぞ。ここを買うぞ!
 慣れない英語に戸惑いながら、クレジットカードで決済をした。残金はほとんど残らなかった。契約書などの書類とガレージの鍵が届いた。タクシーを拾い、書類に書かれた番地や地図を示してガレージまで連れていってもらった。降車する時はちゃんとタクシー代を払った。
 そこは初めて利用した自動車修理工場(盗んだハチロクのボディーペイントとナンバープレートを変えた工場)のすぐ近くで、人通りは少なく、ロサンゼルスらしくない、とても陰気な地区だった。ガレージが建っていたのはやはり高速道路のガード下で、終日、陽の差さない日陰だった。すぐそばにスケートパークがあり、地元のギャングがスケートボードを滑らせたりするのだろう。値段相応のガレージだった。鍵を開け中に入ってみると、ほこり臭く、古びた工具が放置されている。ネズミの巣のような車庫だったが、こんな場所でも俺の物だ。俺の不動産だ。俺はストリートレース連続出場の苦労を偲んだ。
 さっそく保険会社に連絡し、愛車ハチロクを運送してもらった。ハチロクは生まれ変わったようにピカピカだった。そして、日給50ドルで専属の整備士を雇った。愛車のメンテナンスの他、電話1本で俺の元へ車を配車してもらう契約を結んだ。