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ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

旅客機に乗る

 車は再び高速道路を南へ。俺と豚マスクは荷台でけたたましく笑いながら、エアギターを弾いたりエアDJをしたり、突き出した両腕を前後にピストンしたりした。やがてダウンタウンに差し掛かると、レーダーに丸が表示された。誰か近づいてくる。
 次の交差点、右方向から、緑のマッスルカーが飛び出してきた。メロディアスなクラクションを鳴らしながら、6輪ベンツに近づいてきた。一緒に走ろうという意思表示なのか、あおっているのか、それは判別できなかった。だが、車をぶつけてきたり銃を撃ったりしてこないので敵意は無さそうだった。
 俺は同乗の5人を、「ならず者ではあるが、良い人たち」だと思っていた。無法地帯のロサンゼルスにおいては、他人すなわち敵である。それなのに、面識のない俺を友人のように扱ってくれたし、現在進行形で楽しい思いをさせてもらっている。だから、新しく出没したならず者に対しても友好的な態度を見せるものだと、漠然と考えていた。でも違った。
 俺以外の5人が一斉に銃弾を浴びせたため、マッスルカーの運転手は一瞬で絶命した。力なくよたよたと減速するマッスルカーを、俺は荷台から見送った。
 6輪ベンツは走る要塞だった。誰にも止められなかっただろうし、警察だってビビッて寄ってこなかった。
 高速道路をひた走ると、クモ型巨大ロボットのような建造物(一見すると管制塔のようだが、実際は「エンカウンター」という名のレストラン)が見えて来た。ロサンゼルス国際空港だ。飛行機にでも乗るのだろうか。お金がないぞ。旅費不足を心配していると、6輪ベンツは関係車両の通用口で一旦停止した。守衛が自動ゲートをひらく。簡単に滑走路に入れてしまった。5人のうちの誰かが、プライベートジェットもしくは格納庫あるいはその両方を保有しているようだった。
 6輪ベンツは格納庫のひとつに進入し、小型旅客機のすぐそばに乗り捨てられた。ここに駐車してしまって良いのだろうか。レトロプロダクトが旅客機に搭乗し、他の連中もどやどやと乗り込む。もちろん俺も続く。
 法律違反を屁とも思わない連中が、お行儀よく着席してシートベルトをがっちり締めた。まともじゃない相当危ないフライトになる予感がした。俺も自分の体をシートベルトできつく座席に固定した。
 専属の機長などは不在で、レトロプロダクトが操縦桿を握った。「まさか飛行機も運転できるのか」といぶかしがっていると、旅客機は滑走路へと移動を始め、管制塔とたいして交信もしないまま急加速を始めた。そしてそのまま離陸した。むちゃくちゃだ。
 眼下に広がるロサンゼルスは、それはそれは美しかった。長大なビーチに打ち寄せる太平洋の波は、西海岸の豊潤な陽の光を浴び、十重二十重の織物となってきらめいている。サンタモニカ・ピアのジェットコースターや観覧車も見えたし、なんなら旅客機はそのすれすれを低空飛行した。ビバリーヒルズ上空でバレルロールをしたり、ダウンタウンの高層ビル群の隙間をナイフエッジ(機体を90度に傾けた状態)ですり抜けたり、旅客機でそれやっていいのと驚かざるを得ないアクロバット飛行の連続だった。背面飛行だけはしなかったが。墜落するので。
 俺はレトロプロダクトに「あんた最高だ!」と叫んだ。彼は操縦中だったので簡便に「どうも」とだけ返事した。だがあきらかに嬉しそうだった。
 有名なハリウッドサインが間近に見えてきた。山頂付近に白い巨大な看板、H、O、L、L、Y、W、O、O、D。旅客機はこのサインに向けて一直線に進む。ぐんぐん迫るハリウッドサイン。すぐ目の前にあの看板が。そして旅客機は看板にぶつかるぎりぎりを通過し、山越えを果たした。非常に興奮した。
 ハリウッドサインの南側は高級住宅地だったが、北側は何もない。草の生えた変哲のない山だ。テレビや写真ではあまり見ることのない風景を目にして感心していると、飛行中なのにドアが開いた。どうしたのかと思って周りを確認すると、誰もいない。いなくなっている。まさかと思って窓の外を見ると、みんなパラシュートを背負ってダイビングしているではないか。俺だけ出遅れて機内に取り残されてしまった。地上へと落下していく人影は5つ。機長であるレトロプロダクトでさえ飛び降りていた。俺は慌てて操縦席に移り、操縦桿を懸命に引いた。が、飛行機など操縦した経験はないし、そもそも手遅れだった。
 旅客機はバランスを崩して右翼から墜落、大爆発。俺の体はバラバラに吹き飛んだ。