ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

射撃練習/消防車

 ロサンゼルスは車社会だが、アメリカ合衆国銃社会である。ピストルくらい扱えなければ殺され続けるはめになる。自衛のため、俺は射撃練習をすることにした。
 タクシーを拾い、運転手に身振り手振りを交えて行き先を告げた。射撃訓練場に行ってくれ、と。
 荒っぽいが決して何かに接触することのないプロの運転。渋滞の列をごぼう抜きし、信号も無視し、高層ビルが立ち並ぶダウンタウンを目指す。
 「LAガンクラブ」と書かれた巨大な倉庫の前でタクシーは停車した。中に入り、弾丸だけを購入する。手続きのあいだ、所ジョージの写真が飾ってあるのを発見した。
 鼓膜を傷めないためのイヤーマフを装着し、その後は、ひたすらボール紙の人間を撃ち続けた。狙いを定めて心臓を、顔を、何度も、何度も。
 集中して何十発・何百発と撃ち続けていると、射撃の姿勢も洗練され、弾の軌道も安定してきた。リロード速度も上がり、命中率も向上した。俺は閉店時間まで疲れを知らぬ機械のように発砲し続けた。その結果、マウンドから19メートル先のキャッチャーを百発百中で狙撃できるほどの腕前となった。もちろん、キャッチャーが動かないことが条件だし、必ずしもミットのど真ん中を必中できるわけではなかったが。
 俺は残金で買える分だけの弾丸を購入し、退店した。
 店を出た直後、不穏なサイレンが聞こえてきた。徐々にその音は大きくなり、建物の角から一台の消防車が姿を現した。火事かと思ってぼんやり見守っていると、消防車は俺の目の前で急停止した。
「どうしたのだろう、この辺に火の手は上がってないけどな」と思ってその動向を引き続き見守っていると、サイレンを鳴動させたまま、ホースから放水を開始した。
 俺に。
 激しい水圧に俺は吹き飛ばされた。路上をもんどりうって、壁に激突した。わけがわからない。俺は火事か? 消防車は暴徒を鎮圧する勢いで放水を続けた。その他の物質には目もくれず、俺一人に目がけて。
 この悪い冗談を俺は気に入った。水の冷たさが気持ちよかった。ただ、放水時間は長すぎた。終わる気配がない。息が出来ず、水を大量に飲んでしまった。意識が薄れていく。朦朧としていく視野の中で垣間見た消防車の運転席には、正規の消防隊員ではなく、スーツ姿のマフィアみたいなチンピラが乗っていた。笑っていた。
 黙っていても殺される。なんて治安の悪い街なんだろう。