ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

ランボー軍団

 GPS上の車マークは、中古車カーディーラーのマーク上で停車した。車泥棒は自分の所有物にするつもりで車を盗んだのではなく、換金目的で盗んだようだ。そうはさせてなるものかと、俺はバイクの速度を上げた。途中何度かすっ転んだが、あきらめず、中古車カーディーラーに急行した。
 俺が到着する前にGPS上の車マークは再び移動を始めた。買取りを拒否されたのかも知れなかった。この間に俺と彼との距離はだいぶ縮まったが、それでもなかなか追いつけなかった。追跡劇は続く。
 30分後、我が愛車はスクラップ工場で停車した。そこはろくに舗装されていない山の上にあり、ロサンゼルスとは思えない人跡稀なさみしい土地だった。
 度重なる転倒でガソリンタンクがベコベコになったバイクを駆って、俺もどうにかスクラップ工場に到着した。ガラスやタイヤが取り除かれ、赤茶色に錆びついた乗用車のシャーシ、廃タイヤ、その他あらゆる工業的廃材が乱雑に積み上げられている。
 あった。乾燥した砂地の上で、ピカピカの青い車体を光り輝かせているハチロク。俺はトタン塀の裏にバイクを乗り捨て、塀に背をつけて様子をうかがった。
 塀からそっと覗きこむと、革ジャンライダーの姿はなく、3人の屈強な男がハチロクを取り巻いていた。親しげに談笑している。男Aは迷彩ズボンをはいていて、上半身は刺青だらけの裸。長髪で額には黒いバンダナを巻いている。男Bは緑のワークパンツにやはり上半身裸。金色のぶっといネックレスが陽光を照り返している。男Cは黒のタンクトップにオレンジ色のハーフパンツ、スキンヘッドでタバコを吹かしている。そして全員、両手持ちのカービンライフルを捧げている。なんだよこれ、本当にロサンゼルスかよ。ランボー怒りのアフガンじゃねえんだよ。
 絶対勝てる気がしない。奪い返す自信がない。こちらはピストルを撃ったこともないド素人、たとえ機銃を用意したとしてもまったく勝てる気がしない。エクスペンダブルズみたいなあいつらを殺すにはミサイルでも持ってこない限り無理だろう。
 しかしそれでも、俺はあきらめ切れなかった。愛車を奪還するのが不可能だとしても、どうにかしてあの集団に一矢を報いたい。辺りを見回すと、200メートルほど離れた路上に1台のジープが駐車しているのを見つけた。やつらのうちの誰かが乗ってきた車かも知れない。「この車をパンクさせるなりボディーに傷をつけるなりして嫌がらせをしよう」と、みみっちいことを考えた。俺は忍び足でジープに近づいた。
 ジープにはキーが差しっ放しだった。やつらの脳みそは筋肉で出来ているに違いない。このまま盗み去ってやろう。かとも思ったが、俺も男だ。どうにかしてやつらを痛い目に遭わせてやりたかった。少しでも。このまま引き下がっては愛車を盗まれた哀しみ・怒りは収まりそうになかった。
 決めた。猛スピードで突進し、あのうちの誰か一人でも轢き殺してやる。そしてそのままの勢いで逃走しよう。
 俺は静かにエンジンを始動させ、悟られぬよう、やつらの直線上にジープを移動させた。幸いにもやつらは気付いていない。俺は前方の一点を睨みつけ、そして一気にアクセルを踏んだ。猛突進、ハチロクに衝突しないようなライン取りで集団に突っ込んだ。時速100キロメートルほどで男Aに激突、派手に吹き飛ばしてやった。即死だろう。
 当初思い付いた計画では、そのまま逃走を試みる予定だった。だが、ちょっとした欲が出た。突然ジープが突っ込んできてやつらも相当に面食らっただろうし、その混乱に乗じてハチロクを取り返せるかも知れないと思ったのだ。どうする。瞬時に車両を乗り換えるか。とりあえず急ブレーキを踏んだ。踏んでしまった。
 その一瞬の気の迷いが、間違いだった。
 男Bと男Cは落ち着き払っており、ライフルを構えてジープに一斉掃射を開始した。俺の全身から血と肉片が飛び散り、砂地を汚す。
 そして。
 俺は撃ち抜かれてない方の目で、男Aがケロリと立ち上がるのを見た。
 絶対に勝てない。

 男たちは俺の愛車をボコボコにし始めた。男Aが金属バットでボディーを殴打する。男Bが車の上によじのぼり、力任せに屋根を踏みつける。男Cがゴルフクラブで窓ガラスを破砕する。俺には何もできない。何もしてやれない。その光景を遠巻きに眺めているしかなかった。
 取り戻すことを泣く泣くあきらめた俺は、スクラップ工場を後にし、産業道路をとぼとぼ歩いた。