ロサンゼルスの思い出

GTAオンライン(Xbox360海外版)の小説化

車を盗まれる

 サングラスは去っていった。少しショックだったが、ピストルも現金も無事なのであまり気に病まない決心をした。それに、愛車もある。俺はしばらくドライブを楽しむことにした。なめらかな流線型、美しい青色のハチロクちゃん。
 ロサンゼルス東部を安全運転で走行していると、1台のネイキッドバイクが近づいてきた。あきらかにこちらに興味を示しているので俺は停車してやった。ライダーはバイクから降り、俺のハチロクをしげしげと眺め回した。さてはこのスポーツカーがうらやましいのかと思い、俺は彼に観察の時間を与えてやった。すると彼は革ジャンのふところからサブマシンガンを取り出し、射撃の体勢を取った。冗談だろオイ冗談だと言ってくれ。蛇に睨まれた蛙のように俺はすくみ上がり、逃げる間もなく上半身を人間シャワーヘッドにされた。身体中に開けられた穴という穴から血が細い線となって噴き出した。
 暗転。
 100メートルほど離れた場所で意識を取り戻した俺は、革ジャンがハチロクに乗り込むのを目撃した。まさかと思って猛ダッシュしたが間に合わなかった。革ジャンに奪われたハチロクは爆音を轟かせて走り去った。俺はどうして良いかわからず、急に悲しくなった。泣きそうだった。せっかく手に入れた愛車を数分で失った。外国コワイと思った。ロス暴動の頃ならいざ知らず、治安が良いと思っていたロサンゼルスのイメージがいっぺんに悪化した。
 途方に暮れたが、ハチロクには発信器が装備されていることに思い至った。即座にスマートフォンからGPSマップを呼び出す。どこだ。いた。愛車を表す車のマークはマップ上を北上していく。追うしかない。俺は乗り捨てられたネイキッドバイクにまたがり、同じく北を目指して発進した。唸りを上げるエンジン。前輪がふわりと浮き上がり、ウイリー状態で加速していく。
 かと言って二輪車の運転がうまいわけではない。ウイリーをしたのは物の弾みだ。初めの方こそスタントマンさながらの曲乗りだったが、そのうちぶざまに転倒した。人とバイクとは分離し、人であるところの俺は硬いアスファルトの上を転がった。地面との摩擦力に負ける俺をその場に残し、バイクは横倒しになりながらも接地面に火花を散らしながら彼方へと滑っていった。
 たとえ大事故であっても大都会は無関心だ。路上に倒れ伏す俺に通行人は目もくれやしない。激痛よりも恥ずかしさが大きかった。俺はそそくさとバイクを立て直し、破損箇所をすばやくチェックする。走れそうだ。
 この間にもGPS上の車マークはゆっくりと北上を続ける。車泥棒との距離はひらく一方だ。地の果てまでも追ってやる。と言うか、追いつく自信がないので一刻も早く行き止まりである所の地の果てで停車してくれることを祈る。地の果て早く着け。